PDF書き出しにおける解像度とスケールの決め方
スケールのスライダーは変換ツールの中で最も結果を左右する設定でありながら、既定値のまま触られないことが最も多い項目でもあります。この記事では、その数値が何を意味し、何を犠牲にし、どう選べばよいのかを説明します。
スケールが意味していること
PDFのページはポイント単位で記述されます。1ポイントは1/72インチと定義されているため、A4はおよそ595×842ポイント、レターサイズは612×792ポイントになります。スケール1xで描画すると1ポイントあたり1ピクセルが生成され、ちょうど72ピクセル毎インチになります。
そこから先は単純な掛け算です。2xで144dpi、3xで216dpi、4xで288dpi、10xでは720dpiに達します。スライダーは倍率として表示されていますが、72を掛ければそのままDPI設定として読むことができます。
何を犠牲にするか
スケールは縦横の両方に効くため、ピクセル数は2乗で増えます。A4ページは1xでおよそ0.5メガピクセル、2xで2メガピクセル、4xで8メガピクセル、10xでは約50メガピクセルになります。ファイルサイズと描画時間もおおむねこの曲線に沿って増えていきます。
いきなり最大値にするのが良くない既定値であるのはこのためです。100ページの書類をスケール10xで処理するということは、50メガピクセルのビットマップを100回描画させるということであり、出来上がるアーカイブは巨大になります。しかもその精細さは、想定している用途では決して見えません。
用途から値を選ぶ
サムネイルや小さなプレビューであれば1xで実際に十分です。通常の画面で見る場合や、スライドや文書にページを埋め込む場合は2xが妥当な基準になります。一般的な表示サイズで鮮明であり、ファイルサイズも扱いやすい範囲に収まります。
高解像度ディスプレイで見る場合や、閲覧者が拡大する可能性がある場合は、3x〜4xにしておくと余裕があります。印刷用途では4x以上を目安にしてください。288dpi前後あれば本文として許容でき、5xまで上げれば360dpiとなり、多くのオフィス印刷で快適な水準になります。
スライダーの上限付近は、保存を目的とした作業、拡大しても判読できる必要のある細密な図版や小さな文字を含むページ、後から縮小することが前提の場合のためにあります。それ以外の用途では、主に大きなファイルが出来上がるだけです。
解像度と形式は一緒に考える
解像度と形式は独立した判断ではありません。高いスケールが必要なのにアーカイブが扱いにくい大きさになってきた場合、PNGからWEBPや高画質のJPGに切り替えるほうが、スケールを1段階下げるより多くの容量を節約でき、しかも失われる見た目の情報は少なく済みます。
逆に、画質設定を上げてもページがまだ甘く見えるのであれば、問題は画質ではありません。エンコーダーの品質は、そもそも描画されなかった精細さを取り戻すことはできません。その場合はスケールを上げてください。
実践的な手順
画像を表示または印刷する物理的な大きさを把握し、その用途に必要なDPIを掛け合わせ、それに届く最小のスケールを選んでください。実際には画面用途なら2x、印刷用途なら4xに落ち着くことがほとんどで、極端な値は本当にそれを必要とする場合のために取っておけば十分です。書類全体を処理する前に1ページだけ試しに変換すれば、数秒で済むうえに当て推量を大きく減らせます。